旅の途中

もうこんな時間です。
早いですね。明日も仕事。夜更かしは大の苦手ですが、記事を更新することにします。
3年前に一度書いた話ですが、今夜はもう少し詳しく書くことにします。

何故?そうですね、他に書くことがなくなったということ。
それと、敢えて言えばなんとなく思い出してしまったから。
そして、忘れないうちに記録に留めておこう、そんなところでしょうか。

まあ、年のせいで最近やたらと昔のことを思い出すのかも知れませんね。
少し長くなりますが、しばらくお付き合い下さい。


東京池袋に当時では日本一の高層ビル「サンシャイン60」が完成。

サザンオールスターズが「勝手にシンドバッド」でメジャーデビューし、キャンディーズが解散した年のことです。

21歳の私は、大学の春休みを利用して四国一週の旅に出ました。

そんな、旅の途中での出来事です。

私は阿波池田へ向かうため、国鉄土讃線の高知駅で列車に乗りこみました。

すると、向かい合わせのボックス席に腰を下ろした瞬間、ホームを小走りする女性が目に映ったのです。

まさに、発車間際の出来事でした。

華奢でスラっとした身体に大きなスポーツバッグとフォークギターを抱えた同年代と思われるその女性は、大慌てで列車に飛び乗ったのです。


はい、つまりその女性と私が相席になった、というお話です。


座席に落ち着いた彼女は、何の躊躇いもなく私に話しかけてきました。

「旅してるの?」

「はい、一人旅なんです」

「いいわねー、男の人なら相部屋でもなんでもオーケーやしね。で、どこ行ってきたん」

「今日は、中村から高知を巡って来ました」

「見残し海岸へは行ったの?あそこが一番好きやわ」

そして、

「四国はいい所がいっぱいあるんよ。こんぴらさんって知っとる? あそこ上った時、やったー頂上やわ、と思うたらまだ半分だったりしてね。あと、五台山も好きやね。牧野植物園とか、いろいろ遊べるし」

「今夜は琴平に泊まる予定なので、ぜひ行ってみます」

「前に、関東の伊豆に行った時、お昼にうどんを注文したんよ。その時は驚いたわー。ちょっと見て、このうどん真っ黒くなっとるって。だって汁の色が全然違うんやもん」

と言いながら吹きだす彼女。

「ぼくは逆に薄味は苦手ですけどね(笑)」

「私ね、学校に残ってくれって言われたんよ。短大に欲しい人材だからって。でも、公務員に決めたの。これからは公務員が一番やと思って」

「そのギター? サークルに入ってたんですか」

私は通路に置かれたヤイリのギターに目をやりました。

「うん、大学に入ってからフォーク聞いたんよ。それまでは太宰治とか芥川龍之介とかの本ばかり読んでたけど。それからギターを始めたの。今はグレープが好きやねー」

「ぼくもグレープ、大好きです。蝉時雨とか無縁坂とか」

「そう、いい曲作るよね、さだまさし」

その後も彼女は、四国での生活を懐かしむように、そして、ようやく解放された安堵感からか、いくつもの思い出を話し続けたのです。

私はただ黙って頷くばかりでした。

「でも、4年間長かったわー。2年までは早かったんやけど。3年終わった時は、まだ1年あるーって叫んだわ」

2時間程の車中、彼女のこんな一方的な話を聞いているうちによくあることですが、私はその気さくさに惹かれていきました。

彼女は長崎市出身で、活水高校から高知県の理学療法士関係の大学を卒業し、故郷へ帰る途中とのこと。

でも、ようやく打ち解けた頃がお別れです。

もっと同じ時間を共有していたいと思いましたが、私は予定通り阿波池田で下車したのです。

別れ際の「がんばるんよ……」という彼女の一言が今でも忘れられません。

やがて家に戻った私は、どうしても彼女のことが気になってしかたありませんでした。

そして、とうとう私は彼女が卒業したという大学に手紙を送ったのです。

彼女のことを教えてください、と汚い字ながら一生懸命にその思いを便箋に綴りました。

まだ、パソコンが普及する前の時代です、手書きで必死に書いたのを覚えています。

それから数日後でした、なんとその大学から手紙が届いたのです。

しかも学長からでした。

そして、その手紙にはこんなことが書かれていました。

≪女性のことはよく知っているが、君より年上だ。君の気持ちはよくわかる。

しかし、こういうことはよくある話で、冷静に考えればいずれ冷めていくものだ。

何より君はまだ大学生、今やらなければならないことがきっとあるはず。

何年か経ってまだ気持ちが変わらなければ、もう一度連絡しなさい。

そして、一言忠告させていただくなら、君の手紙の誤字脱字、もっと勉強しなさい≫

自分の未熟さを思い知らされた瞬間です。

さらに、

≪本当はこういう手紙に返事は書かないものだが、君の住んでいる街(埼玉県の某市)は、私が若い頃よく釣りに行ったのでとても懐かしかった≫

だから返事を書いた、とのことでした。

他にも、見ず知らずの私に対する数々の激励の言葉が、その手紙には認められていたのです。

手紙を読み終えた私は、そうだ今やるべきことをきちんとやろう、そして、これからの人生、誠意には誠意で返そう、そう心に決めたのです。

もちろん、その後の私が学長に連絡することは……ありませんでした。


ということで、お恥ずかしい話を最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。


(注)文中の会話については、当時の記憶とメモに頼っておりますので、方言等正確な表現でない場合もあることをお詫び申し上げます。

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この記事へのコメント

るぅ~しぃ
2009年03月12日 00:51
こんばんは♪

その話、覚えていますよ。
その方は私の先輩だったんですか!
もしかしたら兄嫁の同窓生かもしれません。

ワラをもつかむ思いで大学に手紙を出したのに、想いは届かなかった・・・素敵なお話です。
2009年03月12日 11:17
ほろ苦い恋のお話・・・今の時代だったら赤外線でメールアドレスの交換なんて簡単に出来たでしょうに・・・・良し悪しですよね・昔も中々情緒があって捨て難い思い出。素敵なお話ですね
2009年03月13日 00:07
おぉ~、青春真っ只中の頃のエピソード、いいですね。
四丁目さんの原点を垣間見させていただきました。「寅さん」にも通じるような....

ホント、昔は気持ちを伝えるのにも今と違い苦労したものですね、ある意味情緒的でもありました....
学長さんは粋な方でしたね、大学の雰囲気が忍ばれます。
四丁目
2009年03月13日 22:59
るぅ~しぃさんへ。
その方は長崎の素晴らしさをたくさん話してくださいました。もしかしたら、縁のある方かも知れませんね。
今でも『長崎』というと、その方とるぅ~しぃさんを思い出すんです(笑)
四丁目
2009年03月13日 23:04
涼華姉さんへ。
アナログな昔の方が情緒があって良かったですね。ピッピッピッとキーを叩くのではなく、一つ一つのぎこちない作業の方が温かみがあったように思います。ほろ苦くも温かみのある経験だったと思っています。
四丁目
2009年03月13日 23:07
takabonさんへ。
なぜ男は寅さんを演じたがるのでしょうね。
まさに、takabonさんのおっしゃるとおりだと思います。寅さんなんですよ。
それと、そうですね、もしかしたら原点だったかもしれませんね。学長さんには感謝していますよ。
2009年03月14日 23:39
叶わない恋だったからこそ美しいまま残しておくことができたのかもしれませんね。
人生には幾つもの『If』が付きもののようですから。
幾つかのイフで今の自分があるのなら,
それも含めて楽しんでしまいましょうか?
出会いって不思議で面白いものですね。
どこかで何かが変わっていたら・・・?
四丁目さまはその方とご結婚されていたかもしれないのですものね。
そうしたらお嬢様も産まれなくて,私はお嬢様にお会いできなかったということ?
人生って不思議です。
私はお嬢様にお会いできてとっても嬉しかったですから。
心からそう思っておりますわ。
B・J
2009年03月15日 22:10
 色々なことがあったんですね。私にはなかったですね。これから、これからですよ。
四丁目
2009年03月15日 22:52
人魚姫さんへ。
例えば、地図上で角度が1度違ったとしても、先に行けば行くほどその差は広がってしまいます。無数のイフの中でたったひとつだけ選ばれたイフの中で今があるのですね。
これは神秘的でとても素晴らしいことだと思います。
娘が人魚姫さんに会えたのも様々なイフの積み重ねだと思います。感謝しています。
その節はありがとうございました。
四丁目
2009年03月15日 22:55
B・Jさんへ。
そのうち、絶対にいいことがありますよ。
人生は平等ですからね。
もう少し、もうすぐですよ。
何かありましたら、ご報告お願いいたしますね。
2009年03月15日 23:30
「イフ」で思い出しましたが、いわゆる What if ものの話の DVD があります。
「天使のくれた時間」ニコラス・ケイジ、ティア・レオーニです。

我々の歳になると妙にはまる題材のお話ですよ。機会があったらレンタルしてみてください。
この映画でティア・レオーニのファンになりました
四丁目
2009年03月18日 22:06
takabonさんへ。
『天使のくれた時間』今度見てみますね。
いわゆる、パラレルワールドって、本当にあるのかも知れませんね~。

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